矢幡洋の精神医学と心理学

学術的なことをかみ砕いたり、日常生活にお役に立てる知識まで幅広く扱います。これまで出した本の初期稿(出版されたものより情報量は多いです)や未発表原稿を連載しますので、何かしら新しい記事があります。本ブログは他にあり、読み切り本気記事はタイトル・サブタイトルが「|」の形で更新情報をお伝えします

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性格タイプ 019反社会性 19ルールから束縛を受けずに自分勝手にやる

ルールから束縛を受けずに自分勝手にやる

 実は、このような、「獲得したものが、すぐにつまらないものに思えてきてし

まう」「満足感がなくて、すぐに次の獲物を探す」という傾向こそ、AがB子と

のセックスの直後、その体験が「愛を確かめあった宝」となるどころではなく、

Aの態度が冷淡になった一つの理由なのです。このような貪欲さは、Aが基本的

には、後で述べる反社会性性格者のサブタイプの中の「貪欲タイプ」であること

から説明できますので、後の章をお読みになるときにもう一度思い出してみて下

さい。

 さて、このくだりの最後で、B子が結婚願望をほのめかしたので、Aがそれを

煩わしく感じるというところがあります。社会的な責任に対して反社会性性格者

が感じる基本的な感覚は「煩わしい」という思いなのです。

 彼らは、自立的であることを非常に重んじます。これは、社会のルールから

束縛を受けずに自分勝手にやりたい放題やるというだけではなく、他人との人間

関係に束縛を受けない、ということも含まれるのです。

 彼らは、人間関係というものをそこから自分を束縛されない事項が発生しかね

ないものであると受け取ります。彼らの望むことは、愛情関係からですら自由で

あることです。たとえば、このタイプの人々は恋愛関係において不誠実でありう

るでしょう。彼らは、たとえば男性であれば女性との間に愛情が深まればそれは

自分の性的な自由を束縛することになりかねないという危険を感じるのです。そ

のために、自分の欲を満たすことだけを考えているので、相手の女性が夢中にな

ってくると警戒します。彼らにとって、彼らの行動の自由に対して何らかの制限

を及ぼしかねないもの、何らかの義務を課すようなものは重荷であり「煩わしい

もの」でしかないのです。

 彼らにとっては義務や責任というものは「煩わしいもの」でしかなく、それに

とらわれまいとします。自分の欲望の充足に何らかの制限をかけるものはすべて

警戒しなければならないものなのです。

 ましてや、結婚ということになれば、彼らはそこで放棄しなければならなくな

る自由や、自分自身の行動の制限などが加わることを恐れて容易にそこには入っ

てゆこうとしません。彼らは、「自分を安定させるかもしれないが、制限を加え

るかもしれないあらゆるもの」に警戒します。だが、社会的な参加とは何らかの

自分の欲望の充足に制限を設けるものであり、そのような制限なしの完全な自由

など幻想にすぎないのではないでしょうか。