矢幡洋の精神医学と心理学

学術的なことをかみ砕いたり、日常生活にお役に立てる知識まで幅広く扱います。これまで出した本の初期稿(出版されたものより情報量は多いです)や未発表原稿を連載しますので、何かしら新しい記事があります。本ブログは他にあり、読み切り本気記事はタイトル・サブタイトルが「|」の形で更新情報をお伝えします

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性格タイプ 010反社会性 10解説2、親の無関心、同年輩集団への傾斜、「不当な仕打ちを受けた」という思い

解説2、親の無関心、同年輩集団への傾斜、「不当な仕打ちを受けた」という思

ミロンは、反社会性パーソナリティ障害は遺伝性と養育環境の相互作用のうちに

形成される、と述べています。最も典型的なのは「家庭を顧みない父親」と「子

供に無関心な母親」の組み合わせだ、としています。Aの場合はまさにそれに当

たります。(ミロンは、このような親の無関心が反社会性性格を発達させる唯一

の要因ではないとわしながらも、このような性格傾向を発達させるもっとも広く

みられる要因である、としている)。

 ミロンは、養育環境で最も大きな影響を与えるものを「親の無関心」であると

しています。(「無関心」という中には「養育放棄」「親が子供に敵意を向け

る」などの場合も含まれています。彼らは、そもそも他者が持っている感情に対

する感覚を基本的に欠落させているのです。)彼らは、愛着というものを拒絶し

ているのではなく、そもそも愛着という感覚を知らないでいるのです。(また、

彼らの中には継続的な怒りの感情が蓄積されてしまいます)。

 このような対人関係の基礎を欠いている結果、彼らは他人の感情に対する基本

的な感覚を十分に発達させられないままになってしまいます。彼らは、「他人の

気持ちをふみにじって喜びを感じる」というよりも、「他人がどのような気持ち

を持っているのか、そもそもよくわかりません。仮に頭では理解出来たとしても、

他人の喜びを共に喜び、他人の悲しみを共に悲しむような『共感性』を欠いてい

る」ということになります。

 親が、子供に対して十分な関心を供給しないことから、反社会性性格者のもう

一つの基本的な態度が生じます。

彼らは親から十分な関心を寄せられないために「環境が自分に対して肯定的なも

のを供給してくれる」という感覚を欠落させてしまいます。基本的に、世界が恵

まれた肯定的なものであるという基本的感覚を欠いてしまうのです。彼らは、黙

って座っていても世界は何も与えてくれず、自分の方から進んでいって欲しいも

のを獲得しなければならないと考えてしまうのです。