矢幡洋の精神医学と心理学

学術的なことをかみ砕いたり、日常生活にお役に立てる知識まで幅広く扱います。これまで出した本の初期稿(出版されたものより情報量は多いです)や未発表原稿を連載しますので、何かしら新しい記事があります。本ブログは他にあり、読み切り本気記事はタイトル・サブタイトルが「|」の形で更新情報をお伝えします

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性格タイプ 012反社会性 12社会は自分たちに対して何も与えてくれない

社会は自分たちに対して何も与えてくれない

 この傾向は、反社会性性格者になるとますます目立ったものとなります。彼ら

が「他人が愛情をもって何かをしてくれる」という経験に乏しかったためにそも

そも「人が他人に対して好意を感じて何かをやろうとする」ということが理解で

きないのです。そのために、「欲しいものは、独力で入手するしかない」という

ように信じてしまうのです。

 また、愛着体験が十分でないために心の中には慢性的な怒りが蓄積されること

になります。

 また、事実上の父親不在の家庭で育つことが多い彼らは何が望ましく手何が望

ましくないのかという適切なモデルとなる大人を身近に体験することができず、

倫理的な意識の発達は不十分なままにとどまります。

 健全なパーソナリティの発達においでは児童は親に対する愛情から、自らと親

と同一視し、親をモデルにすることによって価値観を発達させてゆくものです。

ところが、反社会的な子供達は親に対する通常の愛情を体験しません。したがっ

て親と自分を同一視しながら道徳観などの価値観を発達させてゆくことができま

せん。Aが道徳感覚を欠いているのはこのような所からくるのかもしれません。

そして、Aの思春期における自己形成は反社会的傾向を決定的に強めるものでし

た。それは、大人をモデルにする代わりに、彼らが思春期において同じような社

会的な性格傾向をもつほかの同年輩の少年たちをモデルとして自己形成をするよ

うになる、ということなのです。

 このタイプの児童が思春期に感じたとき、親を適切なモデルとして体験しなか

った彼らは、社会が彼らに対して提示するルールを身に付けるよりも、自分たち

で考えて行動した方が欲しいものが手に入ると、考えるようになっています。彼

らは、また欲しいものを手に入れるためには大変な努力をしなければならないと

信じています。通常の社会の示す道筋を歩んでだけでは何も手に入らないと社会

は自分たちに対して何も与えてくれないと思っています。